訓練士紹介
田端 麻木乃
昭和49年6月10日、石川県小松市生まれ。
山形県の故・佐藤実先生(元日本パートナードッグ協会理事長)のもとで、警察犬と介助犬の訓練士として修業。犬にまみれた生活の中で、犬のすべてについて学ぶ。
2002年初夏、日本テレビ『ズームイン!!サタデー』にて紹介された介助犬「レオ」の担当訓練士を務める。
現在は「飼い主さんと伴に歩む」をモットーとして、愛犬の訓練や生活指導に従事。
飼い主のみなさまから「相談しやすく親しみやすい訓練士」という、ありがたい言葉をいただいています。
どんな小さな困りごとでも、ご相談ください。
生涯にわたり、
愛犬と飼い主の幸せを支えます。
飼い主が何気なく行っている行動や、良かれと思ってしている関わり方が、愛犬の行動や性格に大きく影響しています。
当方では、その関係性を丁寧に見直しながら、将来を見据えた育て方を提案します。
一時的な改善ではなく、ライフステージの変化にも対応できる土台づくりを重視し、長期的にサポートします。
訓練 第319D017号
保管 第319B085号
ルークの一生
ラブラドール・リトリーバーの「ルーク」。
猟犬として、家族として、5年という短い生涯を生きた一頭の犬と、
そのパパと訓練士の歩みのお話です。
ルークは愛知県で生まれました。
愛知県のお父さんは、猟犬として能力の高いラブラドールリトリーバーを繁殖していました。元来リトリーバー種は、猟野でハンターが撃ち落とした獲物を探して持ち帰ること、すなわちリトリーブ(RETRIEVE=英語で回収の意)を任務とする犬種のことです。
狩猟をする福井県のパパは、回収犬として能力の高いラブラドールリトリーバーを求めて、仲間と愛知県のお父さんのところを訪ねました。同胎犬の中から、石川県でララ、福井県坂井市でカイザー、福井市でルークと名付けられて3頭とも猟犬として育てられていきます。
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ルークのパパとカイザーのパパは、狩猟も猟犬の育成もベテランです。ララのパパは猟犬を飼うのは初めてだったので、愛知県のお父さんの勧めもあって、石川県の犬の訓練士に習うことにしました。そして、ララの訓練を見ていたルークのパパも、習ってみることにしました。そのとき、ルークは一歳頃でした。
ルークは、ずっと立っている犬でした。パパはルークが座っているところ、寝ているところを見た事がありませんでした。きっと、誰もいない時に休んでいたのでしょうね。
さぁ、訓練が始まり、パパは石川県に通います。『スワレ』ができなかったわけではないのですが、『スワレ』の指示をきちんと習うと、人前で座っているルークの姿が見られるようになり、『フセ』を習うと人前で休むようになりました。好き勝手に歩いたり走っていたルークも、『アトヘ』の指示でパパの左側について歩くようになりました。
カイザーのパパも、同じ訓練士の指導を受けるようになりました。訓練のおもしろさにハマったルークのパパは、たくさん練習をしていきますが、ルークはいつも無表情‥。
ラブラドールリトリーバーといえば、フレンドリーで賢く感受性が豊かな犬種ですが、ルークはラブラドールなのに明るくない、喜ばない、いつもムスッとしています。ルークの訓練を進めるために、ルークは石川県の訓練士に1ヶ月預けられました。
その1ヶ月で、ルークはラブラドールらしい明るい表情が見られるようになり、褒めたら喜ぶようになりました。かわいいルークに変身です。
ルークはとても賢い犬で、どんどん訓練が入っていきますが、パパには悩みがあります。ルークはよその人が近づいてくると、ものすごい剣幕で唸って吠えます。それと、獲物を咥えたら離さない、猟犬として致命的な問題点がありました。
獲物を運搬する意欲が強すぎるため、理性を失ってしまうのです。獲物を人に取られてしまうと思うと、取られないように強く獲物を噛んでしまい、獲物を傷つけてしまいます。獲物を受け取ろうとするパパのことも、敵かのように本気で襲いかかってきます。ダウンジャケットが破れたこともありました。
回収犬としてルークを迎えたのに、肝心の獲物を渡すことができないどころか人に咬みついてくるような犬では、どうしようもないからルークを手放した方がいいと、周りの狩猟仲間たちは言いました。
ルークと楽しい狩猟が早くやりたくて訓練を頑張っていても、この先が思いやられるパパは、ルークをもう育てる事ができないのではないかと悩み、訓練士に相談します。
ララの飼い主さんにはララがピッタリ、カイザーの飼い主さんにはルークは相性が合わない、ルークはルークのパパにしか育てられないと、訓練士は思っていました。ルークのパパは、訓練にとても熱心で根気強くルークに向き合う事ができます。穏やかで強く、状況判断も的確です。
神経質で警戒心が強く、真面目で一途なルークを育てるのはとても難しいのですが、ルークのパパならそれができると、ルークのことをどうか長い長い目で見てあげてほしいと、訓練士は思っていました。
狩猟の世界では、ある意味犬は一つの道具であるかもしれませんが、狩猟さえしなければ普通の家庭犬として十分なほど訓練が入っていました。警戒心が強いので他の人には注意が必要でしたが、飼えない犬ではないと、そして、ルークはゆっくり慎重に訓練を進める必要があり、まだまだ時間がかかるけど、ルークの良いところも悪いところもわかってくれるパパとなら、必ず猟犬として成功できる犬だと訓練士は思っていました。
良いところも悪いところもすべて引き受けて、焦らずにコツコツ訓練してくれるパパのような人が、ルークには必要でした。
でも、ララやカイザーは、どんどん成長して猟で活躍していましたので、猟犬を飼ったのに狩猟で使えないもどかしさを、パパは感じていました。それでも、パパは訓練を続けました。
猟犬ですから、放して川を泳がせたり山を走らせたりしていくのに、基礎が大事だから、リードを放さないで基礎訓練をしっかり叩き込みましょうという訓練士の指導を守り、地道にコツコツと訓練を積み上げていきます。
秋になり、ルークが生まれて三度目の猟期が近づく頃、指示したものを持って来て渡す訓練を、公園で訓練士としていました。少しずつですが、落ち着いて指示によく従い、興奮したりパニックにならずコントロールできるようになってきていました。
ルークは、ゆっくり時間をかけて育てていこうとパパは気付きます。それでも、今、狩猟をするのに、回収犬がいないのは困ります。パパは、新しく犬を飼おうと決断しました。
訓練士は、ルークは猟犬として成功するには時間がかかるから、仕上がるまでパパのためには別の犬を使った方が良いと思っていましたが、別の犬を早い段階で入れるとルークの居場所がなくなるのではないかと考え、これまで言えないでいたのでした。ようやくここまで来れたと、一つの区切りになりました。
その日の夜、ルークは生まれて初めて下痢をしました。新しい犬を入れようとしていることをルークがわかってしまったのだと、みんな思いました。
それから間も無く猟期に入り、パパと猟に出たルークは、なんと!『ダセ』という指示に従い、咥えた獲物を離したのです。ルークのパパに渡したのです。
パパは、これまで生きてきた中で一番嬉しいと思えた出来事でした。コツコツ訓練を続けてきた成果もありますが、「ぼく、できるよ!頑張るから新しい犬を飼わなくてもいいよ!」と言ってるように、みんな思いました。
それからのルークは、どんどん成長して猟で、素晴らしい活躍をしていきます。パパが言うこと、考えていることがわかるかのように、動きます。まるで言葉を交わさず会話をしているようです。パパとルークは一心同体になりました。
人と犬がそれぞれしたい猟をしていて、たまたま一致しているのではなく、パパとルークは同じことを考えて同じことを思って、同じ方向を向いています。
神経質で警戒心が強い性格はそのままですが、全く目が合わなかったルークが、パパをずっと見ています。無表情だったルークが笑顔です。尻尾もふらなかったルークが、いつも尻尾をフリフリ、とても楽しそうです。ルークが本来ルークの行く道を歩むことができるようになり、訓練士は安堵していました。
そんな、生まれて五度目の猟期のある日、ルークは倒れてしまいました。ご飯を食べません。それでも、猟には行く!と言い、車に乗ります。パパは山に連れていきました。素晴らしい動きで、キジを2羽パパにプレゼントしてくれました。でも、猟から帰ると、ぐったりとご飯も食べる事ができません。
パパはすぐに病院に連れて行きました。検査の結果、具合の悪いところが少しありましたので、お薬をもらって帰りました。猟はしても良いと獣医さんが言ってくれたので、翌日も猟に行き、またまた大活躍で、この日もキジを2羽完璧に獲らせてくれました。
ところが、ルークは動かなくなってしまいます。すぐに獣医さんに診てもらいましたが、昨日の検査とは打って変わってとても悪く、緊急入院となってしまいます。
仲間たちが、ルークを心配して連絡してくれます。猟犬として使えないんじゃないかと思われていたルーク、よその人がなかなか近づけなかったルークでしたが、パパとルークの頑張りをみなさん知っていましたので、こんなに愛されてる犬だったんだな、認められているんだなとルークの家族と訓練士は嬉しく思いました。
数日入院し、獣医さんがなんとかルークを助けようと頑張ってくださいましたが、おそらく腎不全で、ルークは逝ってしまいました。
生まれて3年は基礎訓練の日々で猟犬として活動できませんでしたが、やっと仕事ができるようになり、これからもっともっと活躍して、大好きなパパと大好きな猟を続けていくのが楽しみだっただけに、みんな残念に思っていました。
5年という短い生涯でしたが、ルークは周りの人に強烈な印象を残し、パパのこれまでの猟犬の概念を変え、訓練と実践を結びつける為の、日々の犬との暮らしの大切さを教えてくれました。
パパは、ルークが教えてくれたたくさんのことを胸に、狩猟をしていこうと決意を新たにしていました。その後すぐにご縁があり、パパはルークの姪っ子になるアンちゃんを飼うことになりました。驚くほど早くアンとパパとの関係性は構築され、意思の疎通をはかれてるのも、全てはルークのお陰だとパパは日々感じているのでした。
ルーク、ありがとう。
楽しい5年間だったね。